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監督インタビュー

長編映画は『五条霊戦記 GOJOE』以来、約10年くらいの間隔がありましたが、どういうお気持ちでしたか?

別に撮りたくなかったわけでもなく企画自体はかなりの本数、大きな作品もありましたし、海外との合作という話もありましたし、お話は常に意欲的に進めていたんですが、最終的に話がまとまらなかったということです。
それぞれに理由はあると思いますが、この10年間で映画の作り方も激変しましたしね。
それに以前と変わったのは大学で若い人たちに教えるようになって、人材を育成しないとだめだということを感じ始めていました。

その間、日本映画の企画の成り立ちの主流であるマーケティング主導の映画制作のシステムに失望したということはありましたか?

そういうのはないですね。時代は変わるものですから。

この企画をやろうと思ったきっかけはなんですが?

単純に原作の戯曲を読んで面白かった。舞台は見たことはなかったのですが、ある種の驚きでした。
今の時代にこういうことをやっている劇作家がいるんだと。

もともと映像化しようと思って読まれたんですか?

特にそういうことはなかったですね。
それよりも、読んだ後、自分の過去作品を振り返ってみると、セリフの多い作品を作ったことがありませんでしたし、登場人物が多くて(『爆裂都市』は多いですけど)セリフとお芝居で見せるという作品もなかったなぁというのを感じて。
また今の日本の演劇はどうなってるのかにも興味が湧いて。そういう意味でこの作品で改めてお芝居に興味をもったのかな。それまでは自分の興味のポイントがそこになかったもので。

読んだ瞬間に映像化しようと思ったんですか?

そうですね。自分が大学にいるということもあり、キャンパスでのリアリティは知っているというのかな。(戯曲も大学の話なんですか?)まったく一緒です設定は。
それに大学で教えるようになって、ずっと違和感を感じていたんです。自分と今の大学生との考え方の違いとか。この作品でそれが埋まったというのもありますし、新たな発見としては今の大学生も突っ込んで話を聞くと基本的なコアな部分はそんなに変わっていないっていうのがわかって。
またこの原作を映画にしようっていう人は他にいないと思ったし、自分だったら映画にできるんじゃないか、面白いんじゃないかって思いました。

役者やスタッフに台本を渡して、意味が分からないという人はいませんでしたか?

当初、映画化しようとして何人かの知り合いのプロデューサーに相談しても皆、「?」でしたね。
これはもう自分で動くしかないなと覚悟を決めました。
撮影の時に「ところで、何で死んじゃうんですか?」と一度、聞かれましたけど、理由はないって答えました(笑)。
なぜ死ぬかということではなく、いつ、“最期”が来るかは誰にもわからない。死ぬのも生まれるのと同じで自分では選べない、不条理です。しかもそれは平等だっていうことですね。こういう映画になるっていうのは多分みんな予想つかなかったかもしれないですけど。

この戯曲は読んでもなかなか映像のイメージが掴みにくいものではないかと思うんですが、実際に撮影をする前に舞台はご覧になったんですか?

舞台は結局まだ見てないんですよ。影響を受けるのもどうかと思いましたし、どうしてもよくわからないところがあったんで、記録したものは拝見させてもらったんですが。ただ私はやはり映画言語の人間なので、全く創り方が違うなと思いました。

それぞれの登場人物の“最期”は舞台とは違うのですか?

結果的に殆ど同じ人はいないと思います。
食べる仕草をする人だけは似ていますけど。あれも演劇の体の鍛え方をしている人と、映画の役者さんでは違いますし。
舞台の上で登場人物が死んだふりをしている状況を延々と見せるのは斬新だなと思いましたが、その手法は映画では使えない。そもそも見せ方の方法論が根本的に違いますから。

既に舞台という完成されたものを改めて映像化するっていうモチベーションはどこにあったんでしょうか?

この戯曲のテーマ自体が、画期的だと思ったんですね。踏み込んでるところが。非常に普遍的な問題を今風に表現しているというのが。すごくアバウトなように見えて実は物凄く緻密に計算されていて。
それは舞台での表現だけではなく映画の原作としてとても面白いんじゃないかと思ったんです。

更に役者さんがすでに演じているものがあるということはあまり気にならなかったのでしょうか?

全く気にならなかったです。とにかくテーマが魅力的だったんですね。
また実際の演劇はもうちょっと映画に近いのかなと思ったんですけどそうではなかったですね。セリフがすごく口語体でリアルじゃないですか。だからもっと映画的なお芝居かと思ったらかなり演劇的なお芝居だった。
それよりも読んだ瞬間に自分なりの映像が浮かびましたし、またルイス・ブニュエルや川島雄三さんとかジャン・ルノアールとか、個人的に好きで尊敬している監督の作品世界の継承と新展開が点滅したんですね。その時に映画化したいとはっきり思いました。

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